ウォー・デイ 著:W・ストリーパー、J・W・クネトカ 新潮文庫

構成

 1988年10月27日に、ソ連がアメリカを核攻撃し、アメリカが反撃、米ソ核戦争が発生する。しかし、その戦争は、ヨーロッパで結ばれていた秘密協定の影響もあり、全面核戦争にはならずに終結する。
 1988年10月27日、通称「戦争の日(ウォーデイ)」にニューヨークで核攻撃を受けた作家、W・ストリーパーは、被曝により余命はわずか、また、「治療不可能」と判断されることとなった。
 そんな彼は、友人のJ・W・クネトカと共に、ウォーデイ後のアメリカを旅して、人々がウォーデイをどのように過ごし、また、その後、どのようにして生きてきたかを明らかにしようとする、という、フェイクドキュメンタリー形式の小説。
 ページ数は、570ページ、文庫版サイズ。若干、入手困難ですが、古本が売られています。

内容と感想

 全面核戦争とはならず、ウォーデイ(戦争の日)と呼ばれる、1日ですべてが終わった米ソ核戦争後のアメリカを、二人の作家が旅しながら、様々な人々にインタビューする、という、「ワールド・ウォー・Z」の核戦争版のようなあらすじ。(出版はウォーデイが先です、念のため)
 戦争当時の政府高官、祖国が壊滅したことを知らずに潜行している潜水艦を狩る潜水艦掃討部隊の艦長、科学者、自身の体験などを交えながら、リアルな核戦争後のアメリカを描いており、街頭調査の結果や、地図、データが記載されており、ドキュメンタリータッチの小説としてのリアルさ、細部へのこだわりは一級品の傑作。
 戦争により衰退したアメリカに変わり、イギリスや日本がアメリカに変わる新たな超大国となろうとしており、日本製のコンピュータや自動車、リニアモーターカー計画も登場、核の脅威を知っているはずの日本が、ロスアラモスの核施設を大阪に移転しようとしている描写も。
 核戦争後のアメリカは、中央政府が崩壊し、核戦争により被害を受けた地域は、立ち入りが制限される、電磁パルス(EMP)により、電子機器のほぼ全てが破壊されたため、工場やインフラ、経済の複雑なシステムは全て崩壊してしまい、通貨は金本位の金貨に変わられている。
 そして、地方政府も、核攻撃の被害が少ないカリフォルニアが実質的に独立国のようになり、他の地方からの移民を制限するなど、州の集まりであるアメリカらしい一面もある。
 核戦争小説というと、核戦争下でのサバイバルや、全面核戦争後の文明崩壊系を生き抜く、という内容が多い中、たった1日の戦争で崩壊したアメリカのその後をドキュメンタリタッチで描いた作品は少ないのではないだろうか。
 文明崩壊、というほどでもないし、無法者と正義に分かれて争っているわけではないけれど、だからこそ、現実味がある。