ΑΩ 著:小林泰三

どんな本?

 人間とは全く違う生命体である「ガ」はガの一族を攻撃した「影」を追って地球へやってくるが、その時に航空機と衝突、墜落させてしまう。地球に降り立ったガは、地球上での生命維持の為に墜落した航空機に乗っていた会社員、諸星隼人の体を借りることにする。その結果、死んだはずの諸星は事情を知らぬまま再び蘇り、ガと「影」との戦いに巻き込まれてゆく…

内容と感想

 情報生命体である「ガ」が「影」という別の生命体を追って地球に飛来、それに巻き込まれて死亡した人間、諸星隼人の体を借りることになる… というストーリーは、全体として「ウルトラマン」のパロディになっている。諸星とか、隼人とか、そして隼人が(本人の意識のない状態で)「ガ」の戦闘体に変身した時の描写など、各所に「ウルトラマン」を彷彿とさせる描写がある。
 「ガ」の生態は、情報生命体、という実体としての体がなく、プラズマや電磁波などとして情報のみが存在する生命体、という大変理解しにくいものだが、そんなガの一族の生態や、戦闘体に変身する際の描写など各所にSF的な練りこみがあり、読んでいて面白い。
 そして、作者らしい「グロ」も満載で、冒頭の飛行機事故の場面や後半の融合した人間や生物の肉壁、(血管住宅ってやつね。)などは、想像するだけでえぐい描写だ。諸星の体が損傷していくに伴い、ガが戦闘体に変身できる時間も減っていき、さあ、どうする? と読者の気を引きつけて離さない。最後は「ウルトラマン」ではお馴染みの「あの時間」まで減るのは笑える。
 一言でまとめてしまうなら、めちゃスプラッターウルトラマン。情景を頭に浮かべながら最後まで流れるように読もう。