【映画・感想】アメリカン・スナイパーと「ネイビーシールズ最強の狙撃手」

人を殺すのもそれが職業になればそのやり方に創意工夫を凝らすようになる。戦闘では、できるだけ強力な武器を投入したくなる。また、敵を倒す新しくて独創的な方法を、あれこれ考えるようになる。「拳銃で殺してなかったか? それじゃあいっぺんやってみるか」

どんな映画、本?

 アメリカ軍史上最多の160人という狙撃記録を持ち、敵からはラマディの悪魔、として恐れられたスナイパー、クリス・カイルは、戦場では特殊部隊兵士であり、アメリカに帰れば子供と妻を持つ父親でもあった…
 アメリカ軍特殊部隊の狙撃手クリス・カイルの自伝「ネイビーシールズ最強の狙撃手」を基にした戦争映画。

映画、本の内容、みどころ

 映画に関しては、狙撃兵としての狙撃、海兵隊とともに屋内への突入、オリンピック出場経験のある的狙撃手「ムスタファ」との対決、敵に囲まれた状態からの脱出など、戦争映画としての見所は多い。そして、戦場で殺害数を重ねて「伝説野郎」とあだ名される一方、アメリカに帰国した後も戦闘時の記憶がフラッシュバックする、謎の高血圧に悩まされる、妻のタヤに「心は戦場から帰ってきていない」と言われるなど、家庭に帰った後も戦場でのストレスに悩まされる姿を描いている。
 一方の自伝「ネイビーシールズ最強の狙撃手」(以下「最強の狙撃手」)では、本人の戦場での体験を中心にしており、家庭に関する描写はあまり多くない。読み手としては、戦場にいる時の方が生き生きしているような感じすら受けるが、そうでなければ特殊部隊の隊員は務まらないのだろう。映画の冒頭で手榴弾を投げようとした子供と母親を狙撃する場面があるが、「最強の狙撃手」ではこの母子を含めて自分が殺害した敵については、「そうしなければ味方が殺されていた」、「殺害について後悔したことはない、神の前でもその理由を説明できる」と書いている。映画ではこのあたりの心理をうまく描けているか、というと少し微妙な感じはする。もっとも、ビーチボールに掴まって川を渡ろうとする敵のビーチボールを撃ち抜いていき、敵が残りのボールを奪いあう様子を見て「楽しかった」というシーンなんか、映像化したら問題になりそう。(笑)
 これらの戦場を楽しんでいるかのような描写を強調すれば、クリス・カイルはそれこそ本当の「悪魔」として描かれてしまうだろうし、本人も「戦場に行ったことがなければ人の死や戦場で見たことについて冗談を言ったり、笑ったりするのは理解できないだろう」と書いている。戦場と家庭を行き来する兵士の姿に重点を置いた映画と、自身が体験した戦闘について、自身の考えや感情をありのままに書いた自伝、両方を読み、見ることをお勧めする。

こちらもどうぞ

the-level-seven.hatenablog.com

the-level-seven.hatenablog.com

the-level-seven.hatenablog.com

the-level-seven.hatenablog.com