闇(ダーク)ネットの住人たち デジタル裏世界の内幕 著:ジェイミー・バートレット 訳:星水祐

構成

google や yahoo, facebook, twitter, youtube,amazon etc... 皆が当たり前のように使っているインターネットの世界、そこは自由で、匿名性があり、なりたいものになれ、自分のしたいことができる、見つけられる世界だ。
 しかし、その世界の裏側には、表にはでてこない「闇(ダーク)ネット」が存在する。
 ネット荒らしや、身バレ、極右や極左の政治運動、ポルノ、さらに、google やyahoo ではアクセスできないネット空間には「暗殺市場」という名前のウェブサイトまである。
 これまで、ほとんど研究されてこなかった、インターネットの裏側「闇ネット(ダーク)ネット」に光を当て、研究を行った研究者による、「闇(ダーク)ネット」の体験記。
 大きさは、通常のハードカバーサイズ、分量は約450ページ。
 翻訳は、英語圏のネットスラングや言葉遣いをそれらしく翻訳しようとして、苦労した形跡がある。結局、掲示板の内容は、2ch風の翻訳になっていて、(笑)とか、オワタとかが出てくるので、わからない人は調べるように。あと、ビットコインとは何か、インターネットの歴史や、英語圏の顔文字の見方を知っておくとなお良いかもです。;-)
 目次
   はじめに
 序章 自由か死か
 第1章 荒らしの素顔を暴く
 第2章 一匹狼
 第3章 「ゴールド峡谷」へ
 第4章 3クリック
 第5章 オン・ザ・ロード
 第6章 ライト! ウェブカメラ! アクション!
 第7章 ウェルテル効果
 終章 ゾルタン対ゼルザン

内容と感想

 インターネットで検索し、日常的に使われている領域は、ほんのわずかに過ぎない、とか、深層ウェブのサイトを訪れたら、PCをハッキングされた、ウェブカメラ越しにこちらを見られていた、とか、「闇ウェブ」に関して、都市伝説的に語られることは多いでしょう。
 本書では「闇ウェブ」に対して、それよりも少しだけ広く取り扱っているようで、「シルクロード」のような、違法薬物の取引サイトから、極右や極左、掲示板の荒らし、自傷マニアの掲示板、ポルノなど、インターネット上に存在する非生産的、破壊的コンテンツをまとめて「闇ウェブ」として扱っている。
 これらのウェブサイトのうち一部は、(シルクロードとか)は、通常のgoogle検索やyahoo検索では到達できず、Torと呼ばれる特殊なブラウザ(参照→Tor - Wikipedia)を利用しなければ到達できないようになっているそうだ。
 しかし、ここからが重要で、IPアドレスを偽装し、日本ではサイバー犯罪者御用達のようなTorブラウザーだが、その反面、内部告発者やインターネットによる検閲を避けたい人にとっては、救世主、とも言える存在であるのだ。暗号化技術も同様だしLiveLeakのようなサイトは、政府が隠そうとしている映像や画像を明らかにする一方、グロ映像サイト、として一部に人気でもある。
 自殺志願者が集う掲示板で本当に死ぬ人もいれば、同じ境遇の人を見つける人もいる。
 つまり、インターネットは、善か悪かといった議論に意味はない。その差は紙一重であって、使い方次第ではどうにもなってしまうものなのだ。
 そして、極右団体がネットを利用して、大きな支持を集める一方、同じ思想や自分に都合の良い情報に接し続けることにより、思想の過激化が一層進んで行く集団分極化、この現象は、日本でも起こっているに違いない。
 インターネットの表層の、さらに日本語化されているところなど、ごくわずかでしかないわけで、皆さん、少し英語を使ってgoogle検索するだけで、全く違った世界が開けておりますぞ。