米軍が恐れた「卑怯な日本軍」 帝国陸軍戦法マニュアルのすべて 著:一ノ瀬俊也

どんな本?

 地雷や手榴弾を使った仕掛け兵器、夜襲や狙撃、投降したふりをして騙し討ち… 現場の兵士が創意工夫で生み出した罠になんと「対空地雷」まで。
米軍が作成したマニュアル「Punch Blow the Belt」(ボクシングでベルトの下を攻撃すること、だまし討ちという意味があるそうです)を元に、米軍が恐れた日本軍の「卑怯な戦い」を明らかにする。

どんな内容、感想は?

 第1章では、米軍マニュアルをもとにして地雷や手榴弾のような「罠」や死体や一般人、米兵になりすましての騙し討ち、など、米軍が恐れた日本軍の「卑怯な」戦い方について解説する。マニュアルの解説と同時に、各所で米兵や日本兵の回想録を引用し、実際の戦闘で、双方がどのように戦い、相手の罠、だまし討ちに対してどのような感想を持ったかが書かれている。
 米軍の日本兵評もあり「偽装が巧みで、絶対に命令に従い、怪我や病気をしていても死ぬまで戦い、忍耐力とスタミナは最も厳しい状況に耐える」とする一方で、厳しく育てられたせいで、自分自身のために考える力がない、一旦作られた計画に固執して、状況が変化しても自発性や創造性を発揮できない」と書かれている。(耳が痛いね。)
 卑怯な戦い方以外にも、日本軍の夜襲や狙撃、陣地への潜入についても書かれている。木を叩いたりして人数を多く見せたり、機関銃っぽい音を出して混乱を誘うなど、一見バカバカしく見えるけれど、戦場の緊張下ではこれが有効なんだねぇ。
 第2章、第3章では、日本が米軍に仕掛けた「罠」や騙し討ちのような対米戦術をどのように構築していったかを学ぶため、中国戦線、南方戦線での日本軍の戦闘の変化を追っていく。一般に言われるような日本軍の「銃剣突撃重視」「白兵、精神主義」が実はそうではなく、軽機関銃を重視していたこと、しかし、中国戦後に陸軍が想定していた「対ソ連」の戦術として、物量で勝るソ連に対して、「精神主義」的な側面が見え出すことがわかる。前に書いた、「各国陸軍教範を読む」も合わせて読むと、面白いかもしれない。

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 第4章では、日本軍の仕掛け兵器について。地雷や手榴弾を使用した仕掛け、砲弾を再利用した地雷などが登場する。極め付きは「対空地雷」。嘘だと思うかもれないけど読めばわかるから。

 日本軍の仕掛け兵器、狙撃や騙し討ちについて解説されているだけでなく、戦中の日本軍戦術の変化についてもわかりやすく書かれている。マニュアルだけでなく、回想録などで実際の戦場で兵士が体験した感想も合わせて書かれているのが非常に良い。本書中に登場する回想録は米側のものも、いくつかが日本語訳されて出版されているので、それらを読むときも参考になるだろう。

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