核戦争版「ワールド・ウォーZ」 核戦争小説を読もう第5回 W・ストリーバー,J・W・クネトカ「ウォー・デイ」

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どんな本?

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総評

好み度★★★★★
リアル度★★★★★

 作家2人が核戦争後のアメリカを旅行しながら、各地の人々へのインタビューや噂、戦後の政府資料や世論調査などのデータを集めて「核戦争後のアメリカ」の姿を描くドキュメンタリー風小説。

 核戦争の経過やその後の影響など、かなりリアルにシミュレーションされてて、最近の作品では「ワールド・ウォーZ」が好きな人ならかなりハマるかも。

本の詳細

W・ストリーバー,J・W・クネトカによる小説。新潮文庫から発売されています。微妙に入手困難かもしれません。ページ数は約570ページぐらい。

あらすじ

1988年10月28日。
アメリカがソ連核兵器で奇襲され核戦争が始まりそして終わった日。
一日だけの核戦争が起こったその日は「ウォー・デイ(戦争の日)」と呼ばれるようになる。

 それから5年後、ニューヨークで核戦争に巻き込まれたウイトリー・ストリーバーとその友人ジム・クネトカは、戦争の日に何が起こり、その後どうなったか? を調べるべく、いまだに分断され、復興の途上にあるアメリカを周る取材旅行に出かける。

 核戦争時、核兵器発射を命じた「ドゥームズ・デイ・プレーン」ことE-4B空中作戦センターに乗っていた元国防次官

 核戦争後、通信不能などの理由で帰還せず、独自の行動を続ける国籍不明の潜水艦を破壊する「潜水艦狩り」を行うイギリス軍士官

 戦争に巻き込まれなかったために、国力を維持した日本とロスアラモスの原子力研究施設から設備を回収する日本人

 メキシコ国境沿いに広がり、独立を目指す国家アーストランを訪れ、半ば独立国化し避難民の受け入れを拒否するカリフォルニア州への潜入

起承転結! というより、小エピソードを集めた、ドキュメンタリー風小説。どこから読んでも楽しめるので、ちょっとした時間に少しづつ読めますね。

感想

 これまで紹介した作品は全面核戦争によって人類が滅亡する、または文明が崩壊するというシナリオでしたが、今回は一日で終わった限定核戦争後の世界が舞台になっています。なので、アメリカ政府自体は崩壊状態なものの、各州の政府は生き残っており、ヨーロッパや日本など核戦争に参加しなかった国と合わせて、各自復興を行なっています。

核戦争の流れ

 アメリカが弾道ミサイル対策の衛星を打ち上げ、結果、自国の核戦力が無力化されることを恐れたソ連が先制攻撃を開始。

 大規模な電磁パルス攻撃でコンピュータやインフラを破壊、潜水艦や人工衛星から投下された核兵器アメリカを攻撃、一方のアメリカもソ連に対して報復攻撃を実施します。

 結果、両国の政府と核戦力が破壊されたこと、ヨーロッパとソ連の密約により、ソ連のヨーロッパへの攻撃とヨーロッパからソ連への攻撃が起こらなかったことで戦争は、わずか一日で終結します。

感想

 総評にも書いた通り、ワールド・ウォーZの原作小説が好きな人ならハマるでしょう。当事者のインタビューなどから、その時に何があったかを描き出すドキュメンタリー好きにも受けそうです。

 ところで、ウォー・デイでは核攻撃を受けなかったカリフォルニア州が他からの避難民を制限し、半ば独立国のような独自路線を歩んでいます。

そして、核戦争小説を読もう第4回「ポストマン」でも主人公たちを脅かす存在であるサバイバリストと呼ばれる集団が、実はカリフォルニア州から攻撃を受けて主人公たちの方へ押されていることが示唆されています。

 銃規制が厳しく、リベラルな気風でシリコンバレーなどでも知られるカリフォルニア州ですが、アメリカ人的には「なんとなく独自路線を歩みそう」なイメージでもあるんでしょうか?