地下1.5kmの核シェルター 核戦争小説を読もう第6回 モルデカイ・ロシュワルト「レベル・セブン」
前回は「核戦争版ワールド・ウォーZ」ことウォーデイでした。
the-level-seven.hatenablog.com
どんな本?
総評
好み度★★★★★
やりすぎ核シェルター度★★★★★
地下5000フィート(1.5キロ)という場所にある500年生活できる巨大シェルターという時点ですでに面白い香りが漂っております。(奇書の香りかもしれませんが)
やりすぎ核シェルターの描写や核戦争の描写と原因のバカバカしさ、そして、皮肉な結末まで短めながら楽しめる作品です。
本の詳細
絶版のため入手困難です。私が買ったものは古本で900円ぐらいしたと思います(定価は300円)。
キティーちゃんで知られるサンリオが出版していたSF文庫「サンリオSF文庫」のシリーズです。SF好きならおなじみ「青背・白背」のハヤカワ文庫や創元SF文庫などにはないラインナップが特徴でした。
マイナーなSFや、奇書も多いとのこと。ハヤカワ、創元SFと比べると比較的巻数が少ないため全巻コンプリートを目指すマニアも多いとか。
「レベル・セブン 第七地下壕」として彌生書房からも出版されていますがこちらも絶版です。
あらすじ
レベル・セブンとは、500人の人間が500年間生存できるだけの物資を備えた地下5000フィートにある秘密核シェルターである。
核ミサイル発射部隊「PBX部隊」で核ミサイル発射ボタンを押す押しボタン士官のX-117はこのシェルター「レベル・セブン」での任務を命じられた。
二度と戻れない地上や、食事・結婚など地下世界での生活を送る主人公に対し、ある日、ついに核兵器発射の命令が下される。
核戦争の結果、地上は放射線物質によって汚染され、一つ、また一つ、地表に近い核シェルターから連絡が途絶えてゆく…
感想
冷戦期に書かれた小説ということもあり、それとなく、ソ連・アメリカの対立を思い起こさせるような超大国同士の対立が核戦争の原因となりますが、主人公の名前(X-117)をはじめとして固有名詞は出てこず、ソ連・アメリカどちらの立場に立っても同じように読めるようになっています。
そして、本書の特徴と言えばなんと言っても地下4400フィートにある核シェルターです。500年分の物資を備えており、当然、電力源は原子炉、植物を育てて酸素を浄化し、食料は栄養剤のようなものになっています。
核ミサイル攻撃を行うレベル・セブンの他にはミサイル防衛を担当するレベル6から、庶民向けのレベル1まで7階層の核シェルターが存在しています。
反体制的な人間向けに一般庶民より深いレベルの核シェルターを割り当てるあたりもなかなか皮肉的です。(新聞と軽減税率みたいだぁ)
レベル・セブンの核シェルター描写自体にはツッコミどころが多い一方(最も、それを楽しむものなのですが)ミサイルの誤射や誤探知による偶発核戦争自体は文字通り、攻撃一歩手前まで進行したこともあり小説内だけの出来事ではありません。ロシアには司令部が壊滅した時に核兵器を発射する「死の手」と呼ばれる自動報復装置も存在するそうな。