ブラックボックス展の追記

ブラックボックス展と痴漢の話

 先日ブラックボックス展について書いたけれど、気になる記事をいくつか見たので追記します。
 ブラックボックス展の感想を見るに酷評とかじゃなく、問題になりそうなものがいくつかあった。
 「何もないじゃねーか、クソが」系のもの、展示会の意味がわからなかったひとの感想はまあしょうがない。
 私も、「理解できねーよ、ぶっちゃけ眠い」という感想しか出てこない展示会に行ったことあるし。(ちなみにその芸術家は有名で評価もしっかりしている方なので、私の見る目がないだけです。)
 だけれども、痴漢があった、それも結構多数、というのは展示会の意味以前の問題だ。まず、ブラックボックス展の暗闇を利用して痴漢をしよう、と考えた人がいたのはびっくりした。
 私が思うのは、この騒動は防げたし、こうなることを予想して対策するべきものだったと思うけど、まず大事なのは、「痴漢したやつが一番悪い」という原則。
 私はサザエbotの中の人の人格や人柄については何も知らない。
 なので、私は、なかのひとよ氏が痴漢を誘発させるためにこの展示会を開催したとは思っていない。
 ただ、私が、実際あの展示会を見に行った時に(暗闇だから手を伸ばして歩くわけだけれど)これは人に触ってしまうのではないか? という疑念を抱いたのは確か。(代わりに壁に手を触れて、前には手を出さないことにした。)
 そして、暗室前のスペースで「胸を触られた(手が当たった?)?」みたいなことも聞いた。
 今回の痴漢騒動について、これは防げたであろうし、防がなければならないものだったと思う。
 例えば、暗視式の監視カメラをつけたところで展示会の内容、持つ意味になんら変化はないのだから。
 私は自分の持つ価値観を揺さぶり、当たり前を破壊する現代アートが大好きだ。
しかし、現代アートが一人の人間の人生を破壊するものであってはならない。

【行ってみた】ブラックボックス展 ー感想と考察ー

どんな展示?

 twitterで有名な「サザエbot」の中の人、「なかのひとよ」氏による展示会。
「展示内容を口外してはならない」という規則に同意した人だけが見ることができるその展示会は、「何やらとてつもない展示である」として話題になって行った…

内容と感想

 私はこれをtwitterで知った。
それまではサザエbotなどその存在も知らなかった。
そして、展示会の内容を確かめるべく、現地へと向かった。

予想以上に予想通りだった。カーテンで区切られた暗室の中には「何もなかった」

 ブラックボックスとはなんだろう? 
 ブラックボックスとは入力と出力はわかるけれどどのような加工をしているのかは分からない、そんな箱のことだ。
 例えば、3×a=9 で,2×a=6 このとき、入力とそれに対する出力はわかる。
(入力:3→出力:9 入力:2→出力:6)このときのaがブラックボックス、というわけ。
 今回のブラックボックス展では、その展示内容はわからなかった。しかし、twitterリツイートされ、たくさんの人が並んでいる、という入力とtwitter上での感想という出力は分かっていた。
 入場の列に並んで人を観察していると、前後の人はtwitterで書き込みをし、並ぼうとして歩いてくる人もスマホを片手に、出口から出た人も、門番に弾かれて入れなかった人もすぐにスマホを取り出していた。
 中身については不明のまま、入力と出力の情報は拡散されていく。
そして、ブラックボックス展は、それに関する情報が真実であるか、偽の情報であるか、に関係なく、「twitterで話題」ということによって、価値を持った。
 私たちが日々目にして、ツイート、リツイートしていること、実はなんの価値もないのかもしれない。
 あの門番の「選別」もほとんど意味のないものであったに違いない。
 

 何もない展示会を見終わるとカードをもらえる。そこには内容や配布物に関して、一切公言しないこと、そして、内容に触れない感想であれば、酷評でも絶賛でも書くのは自由であること、嘘の感想を書くことも許可するということが書かれていた。
 そして、ブラックボックス展に関して調べると一番よく見かけた感想は偽の内容であった。
 カードには偽の感想を思いつかなかった人のために、偽の感想の例を募集するサイトのURLが書かれていた。
 偽の感想を投稿してください(Post Truth)という入力欄があった。この”Post Truth”とは、トランプ大統領の発言で有名になった「フェイクニュース」が話題になり、それが大きな影響力を持つ、「真実以後の時代」という意味で最近使われるようになった言葉だ。(Postには〜後、という意味がある)
 偽の感想を入力する欄に「Post Truth(真実を投稿する)」という入力欄があることと、偽の感想ですら他人の受け売りであることへの皮肉だろう。
 そして、現在そのURLには「自分で考えよう」とある。

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痴漢騒動について思うところありまして追記しました。

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軍事大国ロシア 新たなる世界戦略と行動原理 著:小泉悠

どんな本?

 冷戦終結後の世界情勢の中で、ロシアがクローズアップされる出来事が増えている。ロシアのプーチン大統領は、世界でもっとも影響力のある人物に選ばれた他、クリミア半島の併合、最近ではシリア空爆など、多極化する世界の中でロシアの存在感が増してきている。本書はそんなロシアを「軍事大国」という側面から見た一冊。

内容と感想

 最近の世界情勢の中で、クリミアやシリアなどで存在感を増す国「ロシア」。日本人にとって馴染みが薄い国だが、本書はそのロシアを「軍事大国」という側面から分析することによって、様々な紛争でのロシアの行動原理を明らかにしている。
 プーチン政権下で愛国教育に重点を置いた政策が行われ、ロシア国民の中でロシア軍の信頼度が向上していること、ロシア語には「安全」という言葉が存在せず、「危険のない状態」というニュアンスでの「安全」しか存在しないということ、軍事パレードや戦車、兵士のモニュメントなどがあり、軍がロシアの生活の身近にある一方でその軍事が秘密の壁に閉ざされていること、など、勉強になることが多い。
 ロシアに行ったことがあるならわかると思うが、地下鉄駅や橋、古い建物には未だに旧ソ連の紋章が付いているものも多いし、「大祖国戦争勝利記念」(ロシアで第二次世界大戦大祖国戦争という)の戦車や兵士の像があるほか、対独戦勝記念など軍事博物館が各所に存在する。
 ロシアの軍事、武器輸出を中国、アメリカ、北朝鮮、シリアなどのロシア外交、国際情勢との関連から分析しているのも、単なるロシア軍の兵器、組織解説に止まらない本書の魅力となっている。
 例えば、北朝鮮の核・ミサイル開発について。詳しい人でなければ、「ロシアと北朝鮮は仲いいんじゃない?」と思うかもしれないが、北朝鮮が軍事力をつけると米軍が韓国にミサイルディフェンスシステムを導入し、極東でのロシア軍の影響力が相対的に低下するため、ロシアは北朝鮮の核・ミサイル開発に反対の姿勢をとっているとか。
 ミリタリについて語るとき、(私も含め)「ミリオタ」と呼ばれる人たちは、兵器や軍の「強さ」について語りがちだけれど、実際は軍をどのように配備するか? どのような仮想敵を設定しどう対処するか? などはある意味、外交の延長線上にあるものだ。日本ならば、「外交の延長としての軍事」は、せいぜい海外派遣や周辺国への装備移転ぐらいだから、本書中の外交と絡めたロシア軍の戦略についての記述はとても興味深い。
 現代ロシア軍や軍事という側面から見たロシアを知る上で欠かせない一冊だろう。

【行ってみた】クエイ兄弟 ファントムミュージアム

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どんな展示?

 悪魔的、幻想的、と言われる映像作品「クロコダイル・ストリート」などで有名な芸術家クエイ兄弟
 その学生時代のドローイングから、映像作品、そして、クエイ兄弟が手がけた舞台芸術インスタレーションまでを網羅した、アジア初の本格的回顧展。

開催場所は?

 渋谷駅から少し歩いた所にある松濤美術館で開催。
 2階と地下1階の展示スペースで展示が行われています。

内容と感想

 松濤美術館に入館するとまず地下1階へ。
地下1階では鉛筆で書かれた絵や兄弟が製作した架空の映画ポスターなどクエイ兄弟のドローイングを見ることができる。そのほかにもクエイ兄弟に大きな影響を与えたとされるポーランドのポスター展で展示されていたポスターが参考出品されているなど、クエイ兄弟の作品だけでなく、彼らに影響を当てた作品も見ることができる。作品は全般的に暗めで、「怖い絵・不安になる絵を貼ってけ」系の掲示板で見そうな感じがする。路上に立ち、遠くの路面電車を見る人や、ゴールの前に立ち、ペナルティーキックを待つ人など、不思議で幻想的ながら不安を感じるような作品が多かった。
 次は美術館2階の展示室へ。
 2階ではクエイ兄弟の映像作品や撮影に使用したセットが展示されている。
 展示会ポスターの写真として使われている「ストリート・オブ・クロコダイル」の一場面もある。映像作品としては「ストリート・オブ・クロコダイル」の一部など短編作品を中心に数作品の映像を見ることができる。作品の雰囲気としては何よりも「幻想的」。ヤン・シュヴァンクマイエルが好きな人ならきっと見入ってしまうはずだ。最後の展示はクエイ兄弟インスタレーションや舞台作品などが写真で紹介されているものであった。
 あと、関係ないけどこの美術館について。
 この美術館は地上2階、地下2階建になっているらしく、建物はドーナツ型、中央は地下2階から最上階まで吹き抜けになっており噴水のある池があった。内部は出入り口がアーチで仕切られていることもあり、「白い箱」というイメージの強い美術館とは少し違った面白い建築だった。

公式サイト

クエイ兄弟 The Quay Brothers|松濤美術館

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玩具修理者 著:小林泰三

 日本ホラー小説大賞短編賞受賞作「玩具修理者」そして、「酔歩する男」の二作品を収録

あらすじ

玩具修理者

 男と女が喫茶店で話している。女はいつもサングラスをかけており、男がその理由を聞く。女は事故に遭い、そのためサングラスが必要になった、と言うのだが、男はそんな大きな事故の話は聞いたことがなく、真相をつかもうとする。そして、女は、昔、彼女の住んでいた家の近所にいた玩具修理者の話を始める。国籍も年齢もわからない謎の玩具修理者は、彼女から「ようぐそうとほうとふ」と呼ばれていた。玩具修理者の元に持ち込まれた玩具は、それがどんなに複雑であろうと元通りになって戻ってくるのだと言う。女やその友人たちは、様々なものを玩具修理者の元へと持ち込んでいた、ゲーム機や光線銃、そして猫まで、…

「酔歩する男」

 血沼壮士はある奇妙な経験をすることがある。いつも立ち寄る店にどうしても辿り着けない、しかし二、三日すると、その店にいつものように行くことができるようになる。そんな彼はある居酒屋で小竹田丈夫と名乗る見知らぬ男に話しかけられる、彼は自分と血沼はかつての親友であったのだ、と話す。小竹田と名乗った男は、明日になるとこの店に来られなくなる、などと話し、その話は一向に要領を得ない。帰ろうとする血沼だったが、自らの記憶に欠落があるのではないか、と疑い、小竹田の話を聞くことにする。小竹田は、かつて二人が親友であった大学時代の話を始める。二人がともに好意を寄せていた手児奈は駅で事故に遭い死んでしまう。手児奈を救う、ということに狂った血沼は、小竹田に医者になって手児奈のクローンを作るように要求する。小竹田は医学教授になるが、手児奈のクローンを作ったところでそれは手児奈ではなく、無意味だ、としてクローン制作を放棄していた。そんな彼の元に、大学院進学後、行方不明となっていた血沼が訪ねてくる。彼は脳の中で時間の認識を司る部分を破壊し、タイムスリップしよう、という計画を立てていたのだ。

感想

玩具修理者

 読み終えた時は、ミステリーっぽいかな? と感じた。男と女の関係はなんとなく読んでいてはわからないだろう、いわゆる叙述トリックというやつが使われているように感じた。
 玩具修理者が子供や猫、ゲーム機を分解するときの描写も魅力的だけれども、何種類かの玩具を分解し、それらの部品を組み合わせて元々の玩具を修理してしまう玩具修理者の不思議さと不気味さが特徴的だった。
 死んでしまった猫を「玩具」として玩具修理者の元に持ち込む友人や、自らの弟を「修理してもらうため」に玩具修理者の元に持ち込む女。「修理された」弟は一部にはゲーム機の部品が、一部には猫の部品が使われている。ちゃんと元どおりに動くからいいかもしれないが、元どおりに動けばいいのか、体の何割かがゲーム機や猫に置き換えられた人間は一体誰になるのか?
 短編で読みやすいながら、トリックもある一作品。

「酔歩する男」

 短編作品の玩具修理者に対して、本作は中編、こちらを一読した感想はホラーSFかな? というもの。
 「シュレーディンガーの猫」を理解できないと話についていくのは難しいかも。
脳の時間を認識する部分を破壊した結果、意識を失うと人生のどこかへとタイムスリップしてしまう体質となった小竹田の描写が恐ろしい。眠ると未来か、過去のどちらかに移動してしまう。例えば自殺などで死んだとしても、自殺→意識がなくなる→タイムスリップ、といういわば「死ぬことができず、自分の人生をループし続ける」状態になってしまう。
 脳の時間の認識法や、量子力学を取り入れたタイムスリップなど、理系なホラーSF、といった印象。
 

【感想・ネタバレ】ドント・ブリーズ

どんな映画?

 空き巣を繰り返すロッキー、アレックス、マニーの若者3人組がイラク戦争退役軍人の家に強盗に入る。相手は盲目の元軍人、強盗はすぐに終わるはずだったのだが…
 驚異的な聴力と戦闘力を持つ軍人から逃げたければ息をする音すら消さなければならない…


映画 『ドント・ブリーズ』 予告

映画の内容

 細かく書くので長くなります。簡単に言えば、空き巣の若者vs盲目の殺人マシーン、みたいな感じです(笑)

序盤:退役軍人宅への侵入まで

 空き巣を繰り返すロッキー、アレックス、マニーの3人組。彼らはセキュリティ企業経営者の息子であるアレックスの手を借りて空き巣を繰り返していた。
 そんなある日、彼らはイラク戦争の退役軍人が莫大な金を持っていることを知る。デトロイトで暮らす両親と決別し、ロサンゼルスへ引っ越そうと計画しているロッキーはアレックス、マニーとともに退役軍人の家に侵入し、金を奪う計画を立てる。退役軍人は資産家の娘が起こした交通事故で自らの娘を失い、その賠償金として多額の現金を手にしていたのだ。
 午前2時、3人組は薬で犬を眠らせてから、退役軍人の家に侵入する。軍人は用心のために扉に鍵をたくさん取り付け、窓に鉄格子をはめ、猛犬を飼うなどしていたが、イラク戦争で負傷した退役軍人は目が見えない、寝ている間に侵入し金を奪うぐらい楽勝だ、と3人は考えていた。

中盤:退役軍人が目を覚まし、追われることになる3人組

 退役軍人の寝室で睡眠ガスを発生させたマニーは、廊下の明かりをつけるなど、大胆な行動に出る。もともとあまり乗り気でなかったアレックスは盲目の元軍人から、彼が失った娘の賠償金として得た金を盗むことに嫌気がさし、先に帰ってしまう。一方、金が隠してありそうな頑丈な鍵のかかった扉を見つけたマニーはそれを開けるために持っていた銃で鍵を撃つ、とその時、寝室の扉が開き、そこには盲目の退役軍人が立っていた。薬で眠らせたはずの軍人が目を覚ましていることに驚いたが、相手の目が見えないこと、銃を持っていることに自信を持ったマニーだったが、相手は盲目ながら凄まじい力でマニーから銃を奪い、彼に突きつける。「何人組だ」と聞く退役軍人に、「一人だ、見逃してくれ」と頼むマニーだったが、退役軍人は彼を射殺する。彼は盲目であるため、同じ部屋のクローゼットの中に隠れはロッキーの存在には気づかなかった。その後、マニーの死体を運んだ退役軍人は家中の扉や窓を施錠し、金のありかであるクローゼットの中の金庫を確かめる。先に帰ろうとしたアレックスだったが、銃声を聞き家の中に戻る。廊下で軍人とすれ違うアレックスだったが相手は盲目であるため彼に気付かない。
 この時、退役軍人は、開いていた扉の下にアレックスとロッキーの靴が置いてあるのを見つけ、他に侵入者がいることを知ってしまった。窓や扉を施錠され、家の中に閉じ込められたロッキーとアレックスは、地下室の扉から外に出るため、地下へと向かう。
 倉庫のような地下室の一角に明かりがつくと、そこには若い女が囚われていた。女は、古びた新聞記事を見せる。それは、交通事故を起こした女が無罪になった、という記事。彼女は交通事故で軍人の娘の命を奪った資産家の娘だったのだ。警察に通報しようとするアレックスと、通報すれば手に入れた金を失うためそれに反対するロッキー。鍵束を見つけた二人は資産家の娘の手錠を外し、地下室の扉を開けるが、そこには退役軍人がマニーの拳銃を持って立っていた。彼は銃を撃ち、その弾は資産家の娘を殺す。地下室から逃げ、一階の玄関の鍵を開けることにした二人。一方、退役軍人は地下室の電源を落とす。アレックスとロッキーにとっては暗闇の地下室だが、家の構造を把握し、驚異的な聴力を持つ盲目の退役軍人にとって、地下室が暗闇であることは何の障害にもならない。少しでも物音を立てれば、退役軍人はその音の方向に正確に銃を撃つ。アレックスを地下室の棚ごしに掴み、銃を撃とうとする退役軍人だったが、銃は弾がなくなり撃てない。アレックスは首を絞められるが、棚が倒れ、そこから逃げ出す。
 どうにか地下室を出る二人だったが、一階の廊下には薬で眠らせたはずの犬がいた。犬に追われ、二階へ逃げる二人は子供部屋に入り、タンスで扉を塞ぐ。だが軍人はタンスで塞がれた扉に体当たりし、押し開けようとする。ロッキーは天井の通気口へと逃げるが、アレックスは退役軍人によって二階から投げ落とされる。アレックスは一階の天窓の上に落ち気を失う。退役軍人は寝室のベット下から自らの拳銃を手に取り、アレックスを撃つ。一階に落下したアレックスは退役軍人との格闘になり、軍人はアレックスをハサミで刺し殺す。

終盤:退役軍人が資産家の娘を監禁していた理由を話す場面から 

退役軍人は通気口から外へ出ようとしたロッキーを捕まえ、拘束する。目を覚ましたロッキーに対して、退役軍人は、父と娘の絆などわかる訳がない、他人の命を奪ったとしても金の力で無罪になれる人がいる不公平を語る。
 退役軍人は、失われた自らの娘の代わりに、資産家の娘に自らの子供を産ませようとしていた。しかし、資産家の娘は銃で撃たれて死んでしまっている。彼は、自らの子供をロッキーに産ませようとしていたのだ。レイプをする目的はない、と話す退役軍人は、冷凍保存しておいた精液をスポイトにとって、ロッキーの子宮に入れようとするが、そこにハサミで殺されたかに思われたアレックスがハンマーを持って、軍人を襲撃する。ハサミはマニーの死体に刺さっていたのだ。間一髪のところでアレックスに助けられたロッキーだが、アレックスは銃で撃たれて死亡、家の外に逃げ出したロッキーも再び退役軍人によって家に連れ戻されてしまう。アレックスが持っていた警報装置のリモコンで警察を呼び、大音量のサイレンで混乱した退役軍人を金属棒で殴り、その場を逃げ出すロッキー。
 後日、妹とともにカリフォルニアへ行く列車に乗るため駅にいるロッキーは、イラク戦争の退役軍人宅に強盗が入った、というニュースを聞く。強盗は二人組、退役軍人は病院に運ばれ無事と報道され、自分について触れられていない、と知ったロッキーは列車に乗る。

映画の感想

映画の作りについて

 音楽や効果音などない中、ひたすら息を殺して盲目の退役軍人をやり過ごす恐怖、かくれんぼで見つかるかもしれないドキドキ感みたいな感覚を期待していた私からすればその辺は期待ハズレだった。
 ホラー映画やスリラー映画の盛り上げ方、については詳しくないのだが、全体的に恐怖を煽る音響(?)が多用されていたり、主人公側も結構物音を立てながら動いていて、予告編で廊下をすれ違うシーンのような、迫り来る相手を必死にやり過ごす、というような「ステルスホラー」というか、何も動きのないことの恐怖、があまり感じられなかった。もちろん、見つからないように息を殺すシーンもあるし、そういったシーンでこれまでの音響がなくなることで沈黙が強調される、というのはあったけど、全体としてもう少し静かな感じを期待していた。一方が見つかりそうになった時に、もう一人がわざと音を出して注意を逸らすとか、声で意思疎通できない感じとか、目は見えないけれど異常に発達した聴力を持つ、いわば「世界の認識方法が違う相手」との対決、については物足りなかったかも。

盲目の退役軍人vs3人組

 これは良かった。軍人は盲目なのだけれど家の構造を頭に入れて少しの物音にも反応して銃を撃ち、明かりを消して自らに有利な状況を作り、さらに猛犬とのコンビで相手を追い詰めて行く。
 退役軍人役は映画アバターで悪役のボス、クオリッチ大佐を演じた人物で筋肉マッチョのかっこいいおっさん(本当にそうなんだぞ)だ。
 個人的に退役軍人側に肩入れして映画を見ていたのもあって、ロッキーに逃げられてしまうラストは予想していなかった。
 だって強盗に入ったのそっちじゃん? みたいな。
 最後まで金に執着するとか、警察に通報するけど自分は金を持ってその場から逃走するとか、主人公の行動と心理がイマイチ理解できなかったせいもあるけど、軽率な自分たちの行動を心底悔いながら絶望のうちに死ぬとか、捕らえられたままでいるようなエンディングが欲しかったなぁ。
 ホラー映画だから、最後はそんなバッドエンドが来て後味悪く終わるに違いないんだと思ってた。

総評など

 盲目だけど凄まじい聴覚を持ち、しかも高い戦闘能力を持った老人、という魅力溢れる設定が良い。退役軍人役のスティーブン・ラングもかっこいいし、悪役が正体不明の快楽殺人者や祟りや呪いでないところも面白い。
 ただ、その設定を活かしきれなかった感じがある。全編通して結構喋ってるし。一歩一歩近づいてくる相手に対して息を潜めてやり過ごすとか、仲間を助けるためにあえて音を出して退役軍人を引きつけるけど、そのせいで自分が危うくなるとか、そんなシーンが欲しかった。
 目は見えないけど高い聴力を持つ、逆に言えば、どれだけ近づかれても音さえ立てなければ大丈夫、という緊張感が欲しかった。
 

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【感想】人類遺産

どんな映画?

 ロングランヒットとなった「いのちの食べ方」などのドキュメンタリー映画監督、ニコラウス・ゲイハルター氏の作品。人間の手によって作られ、利用され、そして放置されて朽ちてゆく廃墟に焦点を当てた作品。


『眠れぬ夜の仕事図鑑』などのニコラウス・ゲイハルター監督作!映画『人類遺産』予告編

映画の内容

 人類が作り上げ、利用し、そして放置されて朽ちてゆく廃墟に焦点を当てた作品。
登場人物がいないばかりでなく、ナレーション、音楽もなく、様々な廃墟が少しづつ朽ちてゆくようすを美しい映像で見せる。
 ブルガリア共産党本部、軍艦島発電所の冷却塔、病院、軍艦、そして、福島の原発事故により立ち入り禁止となった町まで、世界中の70か所以上の廃墟が登場する。

映画の感想

 登場人物なし、ナレーション、音楽なし、加えて言うならば、うつされている場所の説明もカメラの移動もない。映画館の中で約90分の間、廃墟の映像が流れ、一瞬暗転し、また別の廃墟の映像が流れ、を繰り返す。
 映画館の中で聞こえるのは、風の音、水の音、廃墟や放置された物が動く音、虫や動物の立てる音だけ。(後、寝てる観客の寝息(笑))
 私は廃墟写真などを見るのが好きなので、それなりに名前もわかる廃墟や、かつて何だったのかわかるところもあったけれど、初めて見る場所も多かった。
 登場する廃墟は、ヨーロッパの廃城や古代の遺跡というより、ブルガリア共産党本部、軍艦島発電所の冷却塔や放置された兵器、かつて鉱山で賑わい、そして砂漠へと帰っていく街など、人間がその産業や思想のために作り、そして放置したようなものが多かった。また、廃墟にはつきもの?の落書き後などもうつされていない。廃墟となった後、人がいっさい手を触れることなく自然に朽ちてゆく廃墟を写したかったのだろうか。
 映像に関しては、カメラアングル固定、ズームアップやピントのボケを利用した効果も一切ない。人の視野に近いレンズを使っているのだと思う。(たぶん)
 ただ、画面に全く動きがないわけではない。風が吹いて窓や物が動いて音を立て、水が滴りおちる音が響いて、水面で反射した光が壁や天井に模様を描く。雪や砂が廃墟を覆い隠したり、動物がいたり、鳥や虫が飛ぶ。カメラを固定して長時間撮影し、そして動きのあるシーンを採用したのかな? と思いながら見ていた。また、水面の反射や光と影を計算して、アングルを決めて撮影されたのだろう画面は見ていて飽きない。
 日本語の題名は「人類遺産」、ポスターのコピーには「そうして、人類の時代は終わりました」とある。昔「人類が消えた世界」という人類消滅後のシュミュレーションをした本を読んだけれど、その世界を見たらこの映画のように見えるのだろうか。
 どんな目的で作られたか、なぜ放棄されたのか、誰のものなのか、なんという名前なのか、そう言ったこととは関係なく、人が作ったものが自然の一部になっていく。
 これら廃墟は自然や動物にとって、もう名前などない「人類遺産」、もしくはこれらを残した存在が「Homo Sapiens」(原題)なのかな、などと思った。

公式サイト(日本語版)

jinruiisan.espace-sarou.com

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