一気読み推奨の大作SF 「天冥の標」シリーズ

どんな本?

小川一水氏によるSFシリーズ。2009年の「天冥の標I メニーメニーシープ」から、2019年の「天冥の標X 青葉よ、豊かなれ」まで、10巻17冊の大作SFシリーズです。

内容と感想は?

10巻17冊という大作ながら、時代もほぼ現代から宇宙軍が飛び回る時代まで幅広く、病原体の恐怖や宇宙軍vs海賊のスペースバトル、水着回(笑)と様々な味を楽しめます。そして、5巻で一気に話のスケールが大きくなり「10巻までで完結するの? どうやって完結するの?」と先が気になること間違いなしでしょう。ネタバレしないためにも中盤ぐらいまでのあらすじを簡単に書くぐらいにします。また、富安健一郎氏の表紙イラストも見どころです。

天冥の標I メニーメニーシープ 上・下
あらすじ

 時は拡張時代(バルサムエイジ)、人類は宇宙船を使って様々な星に植民を行っていた… しかし、植民地メニーメニーシープは宇宙船シェパード号の墜落により人類のネットワークから脱落、植民地は臨時総督の配電制限に苦しんでいた…

感想

 宇宙開発時代にそこから取り残された星が舞台になります。「失われた高度な文明」好きにはたまらない設定でしょう。 次々と繰り出される設定と終盤の大きな謎… 次巻がどうなるのか気になること間違いなしのスタートです。

天冥の標II 救世群
あらすじ

 時代は現代。パラオ島で謎の疫病が発生。医師の児玉圭吾と矢来華奈子は致死率95%、症状が回復した後も感染力を持ち続ける病気「冥王斑」との戦いを繰り広げる…

感想

 1巻目は宇宙時代に対して第二巻はほぼ現代。致死率95%さらに症状回復後も感染力を持ち続け、患者はこれまでの全てを失って隔離されるという「冥王斑」の恐ろしさが際立ちます。1巻に登場した「救世群」誕生の秘密が明かされます。

天冥の標III アウレーリア一統
あらすじ

 時代は2300年、人類は小惑星帯に大規模植民を行っていた。そんな時代、木星で大赤斑を作り出し、2249年の地球保護戦争時に行方不明となっていた異星人の遺跡「ドロテア・ワット」を探して、救世群・伝説の宇宙海賊・宇宙軍が三つ巴の競争を繰り広げる。

感想

 再び舞台は未来へ。2巻で登場した人物や組織の子孫が登場します。生身で宇宙に出られるように人体を改造し、正装キルトスカートを履いて、宇宙空間での白兵戦を得意とする英国面ノイジーラントの一派「アウレーリア一統」が活躍します。どう見ても紅茶のキマッた宇宙空間での白兵戦が面白いスペースオペラ作品。

天冥の標IV 機械仕掛けの子息たち
感想

 水着回。エロい。

天冥の標V 羊と猿と百菊の銀河
あらすじ

 2349年の小惑星パラスで宇宙農場を営むタック・ヴァンディ。経営不振や機材の不調、反抗期の娘に苦悩する。一方、6億年前のとある星では「ノルルスカイン」が自我に目覚めた。

感想

 宇宙農家の苦悩とノルルスカインのエピソードが交互に語られる。太陽系内でも問題だらけの人類だが実は、人類文明誕生の遥か前から銀河規模の大問題が進行していたことが明かされる。本作のいわば「ラスボス」が明かされるがどうなる人類?

天冥の標VI 宿怨 Part1~part3
あらすじ

 太陽系外からやってきた人類を超えた科学力を持つ異星人「カルミアン」が救世群と出会う。カルミアンと救世群、双方の目的が(少しずれつつ)歪んだ形で一致した結果、太陽系人類は救世群との全面対決へ動いてゆく。

感想

 前作でどう考えても10巻以内で倒せそうにない「ラスボス」的なやつが登場し、「どう決着をつける?」と思っていたところに Part3が来ました。

 10巻であって10冊という意味ではない! (←これ大事)

 Part3ではついに人類の存続や太陽系の支配をかけた全面戦争と救世群の恐ろしい計画が明らかに。崩壊してゆく人類文明の描写は必見です。

天冥の標VII 新世界ハーブC
あらすじ

 前作のラストで、太陽系が崩壊した後、シェパード号で救世群から逃れたアイネイアは恒星船ジニ号でミゲラと再開する。二人はセレス・シティの地下深く、子供達が避難した地下要塞ブラックチェンバーでスカウトのメンバーと再会。MHDのロボットを使う権限を与えられたアイネイアはスカウトのメンバーと協力して必死の生存を図る。

感想

 前作のラストがとてつもないことになっていましたが、今作はブラックチェンバーを拡張し、のちの(500年後の)メニー・メニー・シープ誕生の話が描かれると同時に、主人公を含むスカウトメンバーで子供たちを教育、施設を維持し様々な問題に対処するという15少年漂流記的な楽しみ方もできる作品になっております。と同時に、500年という長い時間の謎、重力の違いの謎など新たな謎も登場します。

 さて、第一巻に話が繋がったところで、異形の救世群とメニーメニーシープ人の関係はどうなるのか、ラスボス「オムニフロラ」とはどう決着をつけるのか?

一気読みすることで伏線や、前回登場した組織や人物のその後がわかりやすく、「前作のアレがこうなってるわけね」とより楽しめるようになると思います。