中途半端に小さいやつは怖いよね「滅びの笛」著:西村寿行

どんな本?

 ハードロマンと呼ばれる作風で知られる西村寿行氏の動物パニック小説。動物が群れをなして東へと移動するという現象が起こる中、山梨県山中でドブネズミが大発生する。家畜や動物を襲うドブネズミの大群はついに街を襲う…

内容と感想

 動物パニックにはジョーズみたいに強い敵が一匹だけ出るタイプ(怪獣もその類ね)と小さな動物が大発生するタイプの2種類があります。

 でかい! 強い! 死なない! という巨大生物や強力な動物との戦いは面白いですが、一方で小さい動物大量発生系もばかにはできません。

生存者ゼロ」ではアリが大量発生しましたが今回はネズミ。

 倒しても倒してもやってくる上に、銃やミサイル、戦車のような近代兵器で倒しきれないあたりが厄介です。

 文章は難しくなく、どんどん読めるのでパニック小説向き。一方でネズミの被害描写や自暴自棄になった人間が起こす暴動の描写、エロ場面が多めなので読む人を選ぶかも。

 一方で人間が自然のバランスを破壊したからネズミの大発生が起きたのだ、という自然破壊や自然をコントロールできるという考えに警鐘を鳴らす小説でもあります。

 特に西村氏がこの作品を書く前に狩猟禁止論者になったことから、小説中、ハンターがネズミを捕食する天敵を狩り尽くしてしまった存在として槍玉に挙げられています。

実際、そのへんのところどうなんでしょう? もちろん過度な自然破壊や狩猟は問題ですが、ある程度は人間が手を入れて維持することで自然のバランスが保たれている側面もあるのでは? と思ったりしてしまいました。

 ま、純粋にパニック描写を楽しむ娯楽作ですので、ぜひ読んでみてください。